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日本騒音制御工学会主催第125回技術講習会(オンライン)に参加しました

技術関係

公益社団法人日本騒音制御工学会主催第125回技術講習会(オンライン)への参加

 

令和3年1月21日に技術講習会へオンラインで受講しました。テーマは「騒音・振動の法規制と苦情実情と対応」です。昨年までは会場での対面形式でしたが、社会情勢によりオンラインへと変わりましたが、内容は充実しており、・騒音・振動に関する法規制の概要、・工場・建設作業騒音振動苦情の実例とその対応・道路騒音振動苦情の実例とその対応・航空機騒音苦情例とその対応・低周波音苦情とその対応の5つのプログラムに分かれてみっちりご説明頂きました。

 

 

  • 騒音・振動に関する法規制の概要

内容は、環境基準、騒音規制法そして振動規制法の3つで構成。

環境基準:環境基本法で定義される「公害」とは相当範囲にわたると記載があるが、場所だけでなく人にも適用される。そして法の中に環境基準(騒音のみ)が定められているが、あくまでも行政上の目標である。騒音に係る環境基準は、交通騒音については地域(道路面やそれ以外)により異なり、あくまでも受け手側の基準「曝露基準の考え」である。評価については等価騒音レベル(LAeq)で曝露する地域による。航空機騒音については地域(専ら住居地域とそれ以外)により異なり、評価は1日の時間帯補正等評価騒音レベル(Lden)で行う。新幹線鉄道騒音についても地域(住居地域とそれ以外)に分かれ、評価は列車ごとの最大騒音レベル(LAmax)で行い、在来線については無いが、大規模改良に際し指針があり、評価は等価騒音レベルで行う。

 

騒音規制法:まずは概要として、国、都道府県、市、市町村が行う事務についての体系の説明から始まり、ほとんどの事務は市町村で対応。騒音規制法は環境基準を達成するための諸対策のひとつである。環境基準と違うのは、生活環境保全が必要な地域を指定し、その中でも特定した事業にのみ適用される。つまり排出側の基準「排出基準の考え」である。注意事項として適用される特定工場等とは、地域指定された事業場に特定施設がある場合だが、そこで発生するすべての騒音が規制対象となること。特定建設作業の場合、特定の作業にのみ適用されること、建設工事の施工者が遵守するものであり、全ての騒音が規制対象ではない(あくまでも特定の建設作業)。自動車騒音の場合、排出側の許容限度は国が定め、受け手側においては要請限度、常時監視(面的評価)を通じて、地域を分けてモニタリングしている。

 

振動規制法:騒音規制法と同様に体系の説明から始まり、騒音同様「排出基準の考え」である。特定工場等振動、特定建設作業振動も騒音同様。道路交通振動は車両ごと、台数ではなく、構造(舗装の状況)で評価を分ける事が必要。台数が少ない場合の評価が難しいため、地方公共団体向けに令和2年4月にマニュアルが出ている。*一般には公開されていない。

最後に、WHOがヨーロッパ向けで作成のノイズガイドラインについては、環境省で現在対応中とのことです。

 

 

  • 工場・建設作業騒音振動苦情の実例とその対応

内容は、苦情処理のポイント、4つの事例、その他の項目で構成。

・苦情処理のポイント(A・B・C)

A苦情処理の流れ

⇒苦情発生、申立から発生源者の対応により解決へ向かうか、紛争処理になるかの流れ

B騒音・振動苦情対応のポイント

⇒①初期対応の重要性を認識

②迅速な対応

③聞き上手になる

④問題点の的確な把握

⑤申立人、発生源者との信頼関係の構築

C現地調査

⇒迅速な対応は限りなく当日がベスト

・事例1:金属スクラップの積み降ろしによる、騒音・振動・ホコリ・悪臭の苦情申立て

まず申立者と面談→発生源者からの聴取→住戸が隣接しており問題ありと感じるが対応は難しそう→現状の把握として騒音・振動レベルの把握のため測定を実施(住宅側の敷地境界にて1週間の連続測定)→騒音レベル77dB(55dB)、振動レベル58dB(60dB)であり、指導書を発行(騒音規制基準の順守指導、具体的な作業の改善要請、改善対策書の提出指示)→指導時の課題(住宅に密接している、事業者が外国人、他法令との関係)→頻繁に立入指導、複数回の指導書発行により苦情者納得し解決

・事例2:解体工事における振動苦情の申立て

申立者との面談(住居で図面作成の仕事をしているが家が揺れて仕事ができない、時間短縮の要望)→発生源者からの聴取(予定以外に基礎撤去に時間がかかる、もう少しで終わるので待ってほしい)→改善指導(作業場所の変更依頼、重機操作方法の配慮、作業時間短縮の検討)→回答(作業時間のみ短縮は可能)→申立者と発生源者との協議(作業時間の変更)→両社が合意し解決

・事例3:携帯電話の通信施設からの騒音苦情の申立て

市役所へ申立者から電話→申立者と面談(音が気になる、施設を家から話してほしい)→施設直近で聞こえる程度と現地で把握→発生源者から聴取(事前説明で了解、法令に接触してない、騒音低減対策の用意はある)→現状の把握として騒音測定実施(深夜測定、室内28dB(唸り音)-外42dB)→改善対策を実施(設備の内壁に遮音材添付、排気ダクトを吸音処理)により寝室では聞き取れない→申立者の反応(唸っている、眠れない)→騒音測定2回目実施(室内20dB・外38dB)→申立者は眠れていた→発生源者との面談(騒音の大きさではなく存在が問題、設置前の住民説明不足を認識、企業の社会的責任により見えない場所に移転を検討)→移転後解決

・事例4:教育施設の調理室からの低周波音としての苦情申立て(発生源者から)

現状の把握(戸建て住宅からの苦情が直接、排風機9:00~14:30稼働しているがカバーをかけた為低周波音がきになる、市の担当者は認識できず)→レベルの低減は確認できるがまだ気になる→低周波音の測定を実施(問題なし)→苦情者側から見えなくすることと市の担当から双方のコミュニケーションを密にすることで解決に向かう

・その他:新型コロナ緊急事態宣言下での苦情状況

苦情件数:増加傾向だが、苦情までは発生せず基準の有無を確認、地方公共団体で差がある。

苦情発生源:在宅勤務により周囲の音が気になる、休校中の子供の声が気になる、時短を無視している飲食店の音がうるさい、マンションの上階の走る音

最後に改善対応として下記に留意して臨むとよい(地方公共団体向け)

①中立の立場を確保

②規制の有無は関係ない

③規制基準にこだわらない

④申立者の要望に近づく

⑤両社が歩みよれる対応

 

  • 道路騒音振動苦情の実例とその対応

内容は、騒音・振動対策に関する基本的事項、苦情対応事例の紹介、騒音・振動対策工の3つの項目で構成。

騒音・振動対策に関する基本的事項:全ての高速道路において環境基準を順守ることは物理的に不可能なので、優先順位をつけて対策を実施(1.学校、医療施設等静穏を有する地域かどうか、2.高速道路建設前から先住者かどうか3.道路の供用後に新築の住宅で基準超過箇所の順)。要請限度は即対策、環境基準を順守できるように目指している。振動も同様。平成30年度では、全騒音苦情の内、自動車に関する割合は1.9%。振動においては6.9%であった。

・苦情対応事例の紹介:

①新規高速道路開通に伴う苦情:新規開通に伴いうるさい、特にジョイント音がうるさい→環境基準は越えてないが、単発騒音が気になる→ジョイント部を閉塞(サイレンサーボックスの設置)→苦情は解決、又ジョイント前後の段差解消の為に舗装材料を変更し解消→環境基準を超えていないため、多額の予算は投入できないが、申立者には真摯に対応することとしている。

②後住者からの苦情:立地に関しては把握していたが、住んでみると騒音が気になる。→遮音壁の嵩上げ→やむを得ず了承

*ASJ RTN Modl2018に関して(一社)日本音響学会から最新モデルも紹介、計算ソフトも購入可能。国土技術政策総合研究所で予測手法が手に入るので、アセスメントで使用できる。

③先住者からの苦情:橋梁部走行車両の騒音問題、ジョイント部突発音、交通量増加に伴う騒音レベルの上昇→環境基準値以下だが、先住者対応の為、対策を実施→音源探索技術として騒音可視化し対策方法の優先順位の策定→遮音度が弱い個所を対策することで解消(関係自治体と共に連携したため早期に解消)。

④航空機騒音苦情例とその対応

4.航空機騒音の苦情に対応する確固たる手法はないため、苦情に対する対応例を発表する事例紹介があった。発生源側が申立者をはじめとする曝露者側にたいする理解を求めるものが多かった。

5.低周波音苦情とその対応

内容は、低周波音の苦情、対応の流れ、評価指針そして対応事例の3つの項目で構成。

・低周波音苦情の分類と知見について:大きく3つに分けられて、心理的苦情(うるさい、気分のいらいら;G特性で評価)、生理的苦情(頭痛・耳鳴り・吐き気・入眠妨害)、物的苦情(家具・建具のがたつき)である。苦情の内訳については100Hz以上の成分も含むため、低周波音以外の苦情もはいってきて、純粋には30%程度である。

・対応について:低周波音問題については必ず大きな原因があるため、問題地点と対象地点における周波数帯域が一致するなど特異的な現象がつかみやすいが、しっかりとした準備が必要になるため、時間を要することが多い。

・評価指針:申立者と発生源側の対応関係をしっかり確認する(思い込みをなくす)。その後、周波数分析により、指針値と比較する。以下でも対応関係があれば対策は可能。

・対応事例:

①医療法人施設屋上の室外機が発生源→調査の結果から50Hz、100Hzの干渉型防音壁を設置し解消

②金属加工機械と申立者居間でのFFT分析により周波数対応が一致していることを発見し、機器の移動により解消

③レシプロコンプレッサ→吸気口から1/4波長距離の場所にサイドブランチを設置し解消。

他にも、山岳トンネル掘削時発破音対策、浚渫船河口付近の浚渫作業時のディーゼルエンジン音対策、工場のボイラ対策、発電用大型ディーゼルエンジン排気音対策、空港の航空機エンジンテスト音対策から家庭用のエコキュート対策までの様々な対策事例の紹介があった。

 

最後に、YEA(大和環境分析センター)でも過去からの測定実績、苦情に関する対応事例、防音・防振対策事例のご紹介は随時受け付けております。

ちょっとした困りごとから専門的なアドバイス委託にしっかりと答え、貢献できればと考えております。

 

 

当セミナーでのQ&A抜粋

Q:低周波の発生源発見に苦慮することが多いのですが、音源探査装置を用いて、低周波音域のものを可視化するということは可能なのでしょうか?

A:音カメラ(市販)は下限周波数が100Hzであり、低周波音に対応してるとは言えない。

Q: 工場の方から防音対策の相談をどこに依頼すれば良いかと聞かれることがありますが、紹介先として騒音制御工学会を案内しても良いものでしょうか?他に案内先として良いところがあればご教授くださいますと助かります。

A:騒音制御工学会事務局はあくまでも事務処理なので、近い専門員のご紹介まで。

Q: 低周波音についてですが、低周波音は周辺全体が揺れることが基本で、ある一部が振動するということはあり得るのでしょうか。

A:全体が揺れるのは地震、各建具は固有振動数が違うのでそれぞれ動く。